知財統計レター

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テスラの特許をマクロ的に統計分析してみました


最近ニュースで、イーロン・マスク氏の話題がよく伝えられていますよね。
イーロン・マスク氏といえば、「テスラ」や「スペースX」の創設者として有名ですが、
そういえばテスラの特許ってどうなんだろうとふと思い、概観するための、マクロ分析を行ってみました。
さらっと読める内容ですので、お気楽にご覧ください。


なお今回の調査では、特許データベースは、サイバーパテント株式会社の“CyberPatentDesk”を、統計解析ソフトは”R”を使用しています。


特許の俯瞰分析(マクロ分析)は、1件1件の特許をよみこむのではなく、数百件から数万件程度の特許文献の集合を作り、それを統計的に解析していきます。ですので、最初に作る特許文献集合がとても大事になります。特許文献集合を作るためには、一般的に、特許検索式を作ります。検索式の文法は特許データベース毎に異なりますが、概念はおおよそ同じです。例えば、出願人、出願年、特許分類、キーワードなどで抽出した集合を、対象に応じて、足したり、引いたり、掛けたりして、決定していきます。


ただ今回は、テスラの特許という条件だけですので、出願人について、”tesla,inc”と”tesla motors inc”を指定したのみです。国は指定していませんので、すべて国や機関に出願されたの特許が対象です。検索結果は1513件になりました(2022年5月18日時点)。まだ若い会社ということもあると思いますが、日本の自動車企業と比較すると、とても少ない印象です。


次の棒グラフは、特許ファミリー単位にまとめて、出願年毎の件数推移を表してみました。テスラは、2014年にEV関連特許の開放を宣言していますが、このグラフからは2014年以降も増加しているように見えます。なお、直近数年はまだ未公開の特許がありますので、少なく見える傾向にあります。


次の棒グラフは、国別の出願件数を表しています。US(アメリカ)が一番多いのは当然として、WO(国際出願)、EP(欧州)に続いて、JP(日本)が多いのですね。CN(中国)よりも多いようです。



次のバブルチャートは、出願年と出願国を、縦横の2軸で表しています。アメリカ以外にも、日本やヨーロッパの出願はコンスタントに続いています。日本への出願が、2021年に4件、2022年に2件あります。内容が気になりますね。


次は、特許分類のランキングについて見てみたいと思います。特許分類は筆頭IPC(国際特許分類)を使用しました。IPCは世界中の国で共通して使用されている特許の技術分類です。通常、1つの特許文献には複数のIPCが付与されますが、その中で最も内容に近いとされるものが筆頭IPCになります。筆頭IPCの1位はH01(電気;基本的電気素子)、2位はH02(電気;電力の発電、変換、配電)、3位はB06(運輸;機械的振動の発生または伝達一般)、4位はG06(物理学;計算または計数)、5位はG01(物理学;測定;試験)でした。電気が運輸より多いところが、テスラらしいですね。


次に、IPCTOP5の出願年推移を見てみます。H(電気)やB(運輸)は最初からコンスタントに出願されていますが、G06は、2018年から急に増えているようにみえますね。内容が気になるところです。


G06(計算または計数)に絞って、IPCサブクラス階層まで掘り下げて出願年推移を見てみます。G06F(電気的デジタルデータ処理)はコンスタントに出願されています。G06K(グラフィックデータの読取り)、G06N(特定の計算モデルに基づく計算装置)が、2018年から増えています。


内容が気になるので、G06K(グラフィックデータの読取り)と、G06N(特定の計算モデルに基づく計算装置)の内容について、ワードクラウドを作ってみました。まずはG06K(グラフィックデータの読取り)です。”image”が最も大きく目立ちます。次には、”training”や”model”,”learning”など。下のほうには、”camera”,”sensor”があります。これらのキーワードから、画像系の機械学習、カメラ、センサーデータに対する人工知能的な処理などと推測できますね。



次は、G06N(特定の計算モデルに基づく計算装置)です。これは、”neural network”や”data”が目立ちます。人工知能関連ですね。また、”classifier”(分類器),”score”などもあり、機械学習関連の内容も多いのだと思われます。



さて、まだ色々と調べてみたいことがあるのですが、長くなりますので、今回はここまでとしたいと思います。


今回の調査で分かったことをまとめると、以下のようになります。

  • テスラの特許は右肩上がりに増えている
  • 日本への出願もそこそこある
  • 設立当初から電力、発電系の特許が多い
  • 2018年以降、AI系、画像処理系の特許が増加している


興味のある分野を絞り込んだあとは、それらの特許文献を直接読み込みます。特許文献は、発明者の方の思いや信念がつまった貴重な文献ですので、丁寧に読み込ませていただきます。特許のマクロ分析には、今回のような分析の手法以外にも、色々な切り口がありますので、またの機会にお届けしたいと思います。最後までお読みくださり、ありがとうございます。


福嶋久美子

 

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