任天堂の「スプラトゥーン3」。すごい人気ですね。私の周りでは、「3」が発売された2022年9月9日以降、老若男女、猫も杓子も、スプラ、スプラ、スプラです。私自身はゲームはやらないのですが、周りの熱気に押されまして、特許の方面から調査してみることにしました。
なお今回の調査では、特許データベースは、サイバーパテント株式会社の“CyberPatentDesk”を利用しています。
さて、まず何の情報もないところから「スプラトゥーン」の特許を調べてみることにします。ひとまず、特許データベースに出願人を「任天堂」、本文のキーワードに「スプラトゥーン(splatoon)」などと入力してみても、当然ながら1件もヒットしません。特許の請求項及び明細書では、なるべく抽象度を高く、上位概念化して記載されるものですので、具体的な固有名称が入ることはまずありません。
次に、「スプラトゥーン」は、イカ型のキャラクタが、インクを掛け合いながら陣地の広さを競い合うゲームということですので、キーワードに「イカ型」を入力してみましたが、これもヒットしません。次に「インク」を入力してみました。これは380件ヒットしました。しかし、ざっと眺めてみますと、ノイズが多そうです。そこで、「インク」から、「インクリメント」と「ラインクリア」を削除してみました。さらに、初代「スプラトゥーン」が発売されたのが2015年なので、2000年より以前の出願はさすがに関係がないだろうということで、出願日を2000年以降に絞ってみました。
検索式は次の通りです。
1 出願人・権利者:任天堂
2 本文全文:インク
3 本文全文:インクリメント+ラインクリア
4 出願日:2000年以降
5 論理式:1×(2#3)×4 (注:#は除外の意味です)
結果は24件になりました。ざっと見ますと、まだまだノイズはありそうですが、第一段階としてはまあまあな感じです。
ちなみに、「インク」の同義語や類義語である「インキ」や「塗料」、「ペンキ」でも検索してみましたが、関連が低いと思われる結果しか得られませんでしたので、同社の特許では「インク」に統一しているのではないかと推測されます。
24件まで絞り込むことができたのなら、あとは明細書を読めば良いのではないかということになりますが、それはそれでなかなか大変な作業になります。例えば、「特願2021-41237」の請求項1の記載を引用しますと、下記のようになります。
【請求項1】操作部に対するユーザ操作に基づいて情報処理を実行し、表示部に画像を表示させる情報処理装置のコンピュータで実行される情報処理プログラムであって、前記コンピュータに、 所定のオブジェクトを含む第1の3次元仮想空間を第1の仮想カメラで撮像することにより第1の画像を生成する第1画像生成ステップと、 前記第1の3次元仮想空間を示すマップオブジェクトであって、当該第1の3次元仮想空間に対応する3次元モデルにより構成されるマップオブジェクトを生成し、第2の3次元仮想空間内に配置するマップオブジェクト生成ステップと、 前記第1の3次元仮想空間内における前記所定のオブジェクトの位置を示す標識オブジェクトを前記マップオブジェクト上に配置する標識オブジェクト配置ステップと、 前記標識オブジェクトが配置されたマップオブジェクトを含む第2の3次元仮想空間を第2の仮想カメラで撮像することにより第2の画像を生成する第2画像生成ステップと、 前記第1の画像と前記第2の画像を前記表示部に表示させる表示制御ステップと、 前記操作部に対するユーザ操作に基づいて前記第1の仮想カメラの撮像方向、および、前記第2の仮想カメラの撮像方向を制御する仮想カメラ操作ステップと、 前記操作部に対するユーザ操作に基づいて、前記第2の画像上における指示位置を示すカーソル画像を当該第2の画像に重畳して表示するカーソル表示ステップと を実行させ 、 前記操作部に対するユーザ操作に基づいた前記第2の仮想カメラの制御および前記カーソルの指示位置の制御は、同時に実行され る、情報処理プログラム。
すぐには何とのことか分かりません。ですので、この特許が何をテーマにしているのかという勘所をもう少し得るために、ワードクラウドを作って見てみたいと思います。
まずは、「特願2021-41237」の本文全体をワードクラウドで表してみます。

キーワードを見てみますと、カメラ、マップ、撮像、プレイヤアイコンなどが頻出ですので、ゲームの中のマップ操作がテーマであることが推測されます。ゲーム中の画像の中で、具体的なところを探してみますと、下記のような表示のところかと思われます。

次に「特願2021-21912」について見てみます。請求項1の記載を引用しますと下記のようになります。
【請求項1】
仮想空間において、ユーザによって操作されるユーザキャラクタが対戦相手と対戦するゲームをコンピュータに実行させる情報処理プログラムであって、前記コンピュータを、前記ユーザによる第1の操作入力に応じて、指定された前記仮想空間の領域を第1状態に変化させる領域変化手段と、前記ユーザキャラクタが前記第1状態の領域に位置するとき、前記ユーザによる第2の操作入力が継続している間、前記ユーザキャラクタを、前記第1状態の領域において潜伏状態とするキャラクタ状態変化手段と、
前記ユーザキャラクタが前記潜伏状態になっているときに、前記ユーザによる方向操作入力に応じて、前記ユーザキャラクタを前記潜伏状態のまま前記第1状態の領域内において移動させる移動手段と、前記ユーザキャラクタが前記潜伏状態になっているときに、前記ユーザによる第3の操作入力に応じて、前記ユーザキャラクタをジャンプさせることで前記潜伏状態から露出状態に変化させるジャンプ実行手段、として機能させ、前記ジャンプ実行手段は、前記ユーザキャラクタが第1方向に移動しているときに前記第3の操作入力があった場合、前記第3の操作入力があったときを基準とした所定期間における前記ユーザキャラクタの移動速度と移動方向とに基づいて、前記ユーザキャラクタの移動速度に関する速度条件と、前記第1方向とは異なる第2方向に前記ユーザキャラクタを移動させることとなる方向操作入力に関する方向条件と、のうちの少なくとも何れか一方が満たされない場合には、前記ユーザキャラクタの移動方向を前記第2方向へ方向転換させるとともに前記ジャンプを行わせる第1ジャンプ処理を実行し、
前記第3の操作入力があったときを基準とした所定期間における前記ユーザキャラクタの移動速度と移動方向とに基づいて、前記速度条件と前記方向条件とが満たされる場合には、前記ユーザキャラクタの移動方向を前記第2方向へ方向転換させるとともに前記ジャンプを行わせる第2ジャンプ処理を実行し、
前記速度条件は、前記所定期間における前記ユーザキャラクタの移動速度が速いときに満たされやすい条件であり、前記方向条件は、前記第1方向と前記第2方向との差が大きいときに満たされやすい条件であり、前記第2ジャンプ処理が実行される場合には前記第1ジャンプ処理が実行される場合よりも、前記ユーザキャラクタが前記第2方向への方向転換を完了するまでの時間が短い、又は、前記方向転換後の前記ユーザキャラクタの移動速度が速い、情報処理プログラム。
また長いですね。次に「特願2021-21913」の本文全体をワードクラウドで表してみます。

キーワードを見てみますと、ジャンプ、移動、壁面、のぼりなどが見て取れます。これは、「スプラトゥーン3」の新機能である「イカノボリ」に関する発明のようです。これはちゃんと明細書を読んでみたいと思う方もいるのではないでしょうか。ゲーム中の「イカノボリ」の画像は下記のような感じです。

具体的な画像を見ると、なるほど~という感じがしますね。
今回は、身近なゲームの特許について簡単な特許調査を実施してみました。
このように、簡単に検索式を作ってみて、ワードクラウドでざっくりテーマを仕分けることにより、特許調査って案外簡単そうだなと少しでも感じてくだされば幸いです。
福嶋久美子
※なお、本稿で使用しました、amiibo(任天堂より発売されている人形型のゲーム機用周辺機器)の画像、及び、ゲーム中の画面キャプチャは、弊社スタッフの私物を利用し、筆者が加工したものとなります。